幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

ニシンの衝撃を思い出した日。

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ガーデンチェアでハーブティーを飲んでいると、焼き魚の香ばしい香りが風に乗ってやってきた。

その香りにつられた私の脳内には、ホッケの塩焼きを食べたいという思いが広がった。

そこに美味しい日本酒があれば、最高である。

英国暮らしをしいているときにも似たようなことを思い、焼き魚を強く欲していたのだけれど、そのような私を見ていた知人が、英国で食べられているニシンの燻製をご馳走してくれたことがあった。

ニシンは、お節メニューでお馴染みの数の子の親魚で、甘露煮にしたものをお蕎麦に乗せていただく「にしん蕎麦」などが有名だろうか。

英国で目にしたニシンの燻製の第一印象は、ホッケの開きのような大きさをしており、これをグリルで焼くと、白米とお味噌汁を合わせたくなるような、私たちが知っている焼き魚の香ばしい香りがキッチンに広がる素敵な一品だった。

知人は白米を食べる習慣がなかったため、テーブルに準備してあったのはパンだったけれど、焼き魚食べられるだけで幸せだと思った私は、焼き上がりに期待を膨らませた。

お皿に乗せられた焼き立てのニシンの燻製は、どこからどう見ても日本食に見え、英国にこんなメニューがあったのかと小さな感動すら覚えた瞬間である。

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しかし、知人は「そのまま食べないで」とフォークを手にした私を制止し、食べ方を披露したのである。

まずは、カリカリに焼いたトーストにバターをたっぷりと塗った。

2枚目のトーストにはマーマレードジャムを、こちらもたっぷりと塗った。

お皿の上のニシンを真ん中から2枚に切り離し、バターの上とマーマレードジャムの上に1枚ずつ乗せ、お好きな方から召し上がれと私に差し出したのである。

どうやら、英国ではバターやマーマレードを使って食すようなのである。

きっと、そのまま食べても最高に美味しく、お醤油やポン酢、レモン果汁や大根おろしなども合うに違いない。

しかし、郷に入っては郷に従えという言葉が浮かんだ私は、ハードルが低いバターバージョンからいただくことにした。

アリかナシかと問われれば、サバのサンドウィッチのようでアリだと答えるけれど、正気な気持ちはシンプルにいただきたいというものである。

もう片方のマーマレード合わせはというと、こちらを食べたときの感想が私の記憶の中から丸ごと抜け落ちているところを見るに、消してしまいたいほどの味だったのかもれない。

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私が英国で受けたニシンの衝撃は、これだけではなかった。

英国の伝統料理の中にニシンを使って作るパイがある。

これは『魔女の宅急便』の中にも登場する一品なのだけれど、このパイのビジュアルがそれはそれは衝撃的なのである。

百聞は一見に如かずということで、こちらをご覧いただきたいのだけれど。

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 このように、パイ生地からニシンの頭が飛び出した衝撃的なビジュアルをしたパイは本場で、「星を見上げるパイ」という名で親しまれている。

確かにニシンたちが星空を見上げているようなパイなのだけれど、初めて目にした私は、遊び心の一環で作られたものなのだろうかとリアクションに困った記憶がある、思い出の一品である。

ニシン。

日本では冬にお目にかかる魚ではありますけれど、甘露煮や一夜干しなど保存可能な状態に加工したものなどを召し上がる機会や、『魔女の宅急便』をご覧になる機会がありました折には、今回のお話の何かしらをちらりと思い出していただけましたら幸いです。

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