当時の江戸でベストセラーとなり豆腐ブームの火付け役となった『豆腐百珍(とうふひゃくちん)』をパラパラと捲った。
今の私たちからすれば、レシピ本は見慣れたものなのだけれど、その当たり前の走りとなった本だと思って捲ると興味深い本である。
今のように食材が豊富ではなかった時代、限られた食材をいかにバリエーション豊かに食べるかという問題は、台所を預かる者にとっては重要ミッションのひとつだったに違いない。
そのようなときに、豆腐を美味しく食べるためのレシピがギュウギュウに詰め込まれた本があると聞けば、「一冊、くださいな」と私も手を挙げていたようにも思う。
そのような脳内タイムスリップを楽しみつつ流し読みをしていたのだけれど、豆腐を使った汁物の多いこと。
豆腐を使った汁物と言えば、豆腐とワカメのお味噌汁が浮かんだのだけれど、このシンプルなメニューは非常に良くできているメニューだと、栄養士である知人が話していたことがあった。
大豆には様々な働きがあるけれど、その中の一つに、酸化してしまったコレステロールを体外へ排出する働きが挙げられている。
酸化コレステロールが体内に増えてしまうと血管を傷つけ、動脈硬化をはじめとする様々な病の原因になるため、大豆製品は可能であればこまめに摂取しておきたいように思う。
この、魅力的な働きをしてくれる成分は大豆サポニンと呼ばれているのだけれど、どのようなものも一長一短というのは大豆サポニンも同じで、
大豆サポニンの弱点は、酸化コレステロールと一緒に、新陳代謝機能を安定させるヨウドという成分まで体外へ排出してしまうことなのだそう。
だから、豆腐のみを浮かべたお味噌汁ばかりを食べ続けたとすると、体内のヨウドが不足することになるのである。
しかし、ヨウドという成分はワカメや昆布などの海藻類に豊富に含まれているため、大豆製品を食べる際に海藻類も一緒に摂ることで、この弱点を無かったことにすることができるという。
しかも、豆腐に含まれている良質なたんぱく質は、ワカメや昆布などに含まれているカルシウムの吸収を促し、
豆腐に含まれているマグネシウムは、ワカメや昆布に含まれるカルシウムの働きをサポートするという。
何だかややこしくもある豆腐とワカメの関係だけれども、簡単に言えば、弱点を補い合い、互いをパワーアップさせる組み合わせの具材というこのようである。
これからの季節、熱い汁物は喉を通りにくいこともあるけれど、そのような時は、ほんの少しお味噌の量を減らし、温度を下げたものを是非。
私たちの味覚は温度によって感じ方が変わると言われている。
温度が低いものは塩辛さが際立ち、温度が高いものは甘味が際立つため、汁物の温度を少し下げるだけで塩分を控えたお味噌汁が、いつもと同じように感じられるのだ。
塩分量を控えるには出汁を効かせるという方法があるけれど、塩分の摂取量は抑えたいけれど塩辛さは変えたくない場合は、お味噌の量を減らし、温度も少しだけ下げることで欲しい効果と好きな味を欲張ってみるのも手である。
古くから食されている豆腐とワカメのお味噌汁は、私たちが思っている以上にスーパーメニューのようです。
アレルギーがなければ、今晩のお夕食に、お豆腐とワカメのお味噌汁などいかがでしょうか。
健やかな日々を作るための、何かしらのヒントにしていただけましたら幸いです。
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