幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

天使の集会と天使の取り分。

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道すがらにあるお宅の玄関先には、ヨーロッパの庭園が似合いそうな天使のオブジェが並んでいる。

特殊なコーティングが施されているのか手入れが行き届いているのかは分からないけれど、いつ見ても純白の輝きを放っている。

他人様の玄関先へ、度々視線を向けるのは失礼な気もするのだけれど、とても楽しそうな雰囲気を放つ天使のオブジェなので致し方ない、と思うことにしている。

その天使のオブジェ、私が初めて目にしたときには一体だったけれど、気づけば少しずつ数が増え、途中減ったりもしながら今では6体の大所帯である。

その日も、見様によっては猫の集会にも見える天使の集会を視界の端に捉えつつ、そのお宅の前を通り過ぎた。

天使が増えたり減ったりする様子を思い返していると、ふと、エンジェルズシェアという言葉を思い出した。

この言葉は「天使の取り分」「天使の分け前」と訳されているのだけれど、背景には微笑ましいストーリーがある。

今回は、そのようなお話を少し、と思っております。

ご興味ありましたら冷たいお飲み物片手にお付き合いくださいませ。

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私がこの言葉に出会ったのは、スコットランドにある、とあるバーである。

スコットランドという土地柄なのだろう。

カウンターの奥には、スコッチウイスキーのボトルがズラリと並んでいた。

そこで、ウイスキーのうんちくを肴にウイスキーを飲み比べる機会があった。

自分の舌に合うか合わないか、好きか嫌いか、感じたままを言うくらいしかできない私は、説明を聞いたところで意味を理解することはできなかったけれど、好きなものを熱く語る人たちを眺めながら口にするお酒は無条件に美味しく、その時間と空間はとても楽しいものだった。

その訳が分からぬ会話の中で、唯一、記憶に残っているのがエンジェルズシェアという言葉である。

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お酒を木樽に貯蔵しておくと、貯蔵期間中にアルコールや水分が蒸発し、お酒の量が減少するのだけれど、この減ってしまったお酒はエンジェルズシェア(天使の取り分/天使の分け前)と呼ばれている。

天使がどれくらいの量のお酒を取り分とするのか。

ここは、ウイスキーが造られる土地の気候によっても異なり、ウイスキーの仕上がり具合も、湿度が高い土地では水分よりもアルコールの蒸発が多く、熟成が進むにつれてアルコール度数が下がるという。

一方、乾燥している土地や寒暖差が大きい土地では、アルコールよりも水分の蒸発が多いため、アルコール度数が高いお酒が出来上がるそうだ。

このような違いはあるけれど、エンジェルシェアに共通していることは、天使の取り分(天使の分け前)は、どうしたって返ってこないということである。

だけれども、それは美味しいウイスキーを一緒に造ってくれた天使たちへのお礼でもあるのなので、惜しくはないのだとか。

製造過程で起こる現象に天使を登場させるなんて、いいセンスである。

おかげで、この話だけは私の記憶にすんなりと定着している。

ウイスキーを召し上がる機会や天使を目にする機会がありました折には、今回のお話をちらりと思い出していただきまして、ウイスキーの製造に携わった天使たちを想像していただけましたら幸いです。

天使の集会を目にし、そのようなことを思い出した日。

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