大きな声で貯金の話をしている声が聞こえた。
声の主は、小学校低学年くらいの子どもたちである。
その内容は、「もしも1億円もらったらどうする?」というものだった。
そこからどのように話が広がるのだろうかと興味津々だったのだけれど、1億円ってどれくらい?100万円よりすごい?といった、思わず口元が緩んでしまう可愛らしいものだった。
しかし、最近の子どもたちはしっかりしている。
その中の一人が、分からないくらい沢山のお金だから将来のために貯金しなきゃと言った。
すると、他の子どもたちも口々に貯金をすると言い出した。
豪快で夢がある突拍子もない答えを勝手に期待していたことを申し訳なく思ったり、「今」に対してあれこれ思ったりしつつ、彼らとは真逆の方向へ足を進めた。
そう言えば、大人はいつの頃から貯金、預金という言葉を使い分けられるようになるのだろうか。
きっと、使い分けを習ったような記憶なく使い分けている方が多いように思う。
お金を金融機関に預けるときや預けているお金のことを、貯金、預金、預貯金といった言葉で表現するけれど、全てほぼ同じ意味で使われている。
そして、どこの金融機関でこの言葉を使っても同じように通じるけれど、本来は使い分けられている言葉である。
主に「貯金」と言う言葉を使うのは、ゆうちょ銀行や農協や漁協で、「預金」という言葉を使うのは、銀行をはじめとする金融機関である。
これは私の勝手な憶測だけれども、銀行で「貯金を引き出したいのですが……」と言うと、さり気無く「預金のお引き出しですね」と返されるように思う。逆もまた然り。
そして単純に、銀行をはじめとする金融機関に預けているお金と、郵便局や農協、漁協に預けているお金を合わせたものを指して預貯金と言うけれど、この言葉もいつからだろう。
大人になると無意識に使い分けられるようになる、貯金、預金、預貯金という言葉。
私はいつから使い分けられるようになったのか、その境目が全く分からないけれど、いつの間にか覚えてしまっていることや、出来るようになったことは多々あるように思う。
ちなみに、さきほど触れたような使い分けは歴史的な背景の名残もあって使い分けられているのだけれど、歴史的背景以前に「貯金」とは、お金を貯めるという意味があるため、ゆうちょ銀行以外では使ったら間違いということは無い。
私自身は使い分けなど意識せずに過ごしていたのだけれど、ある時、外国人の同僚から貯金と預金は何が違うのかと問われたときに初めて、調べたと記憶している。
細かく説明してもややこしいと判断した私はシンプルに、全て同じ意味だと答えたら、分かり易く頭を抱え込んだ同僚の姿が今も薄っすら記憶に残っている。
外国の方からすれば、貯金、預金、預貯金と、似たような言葉が並ぶため混乱することもあるようだ。
子どもたちの貯金話から、遠い日の記憶に着地した日。
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