出先で香水の残り香のような甘い香りがした。
蝋梅(ろうばい)の香りである。
蝋梅(ろうばい)とは、小さくて黄色い花を蜜蝋に浸してコーティングしたような姿をしていることから、その名が付けられたと言われている梅の花で、香水のような素敵な香りも特徴のひとつだ。
開花シーズンは12月から春になる少し手前頃までだと聞くけれど、私は、今シーズン初めてそれを目にしたように思う。
正確には目で見て気が付いたのではなく、特徴ある香りに連れられて辺りを見回し、その存在に気付くという、いつものパターン。
まだまだ冬が抜けきらない気候だけれど、木々の蕾が膨らみはじめ、暦の上では節分や立春が控えており、春もすぐそばまできているようだ。
鶯たちの声にハッとさせられる日も、そう遠くはないのかもしれない。
そのようなことを思いながら歩いていると、課外授業か何かだと思うのだけれど、駅の入り口付近に子どもたちが整列した状態で腰を下ろしていた。
先生らしき引率者の方の「電車に乗るのでカイロを取り出してください」と言う声が耳に届き、通り過ぎながら声の方へ視線を向けると、子どもたちが、使い捨てカイロを密封できるポリ袋に入れる光景が飛び込んできた。
ゴミを出さないようにという配慮だろうと思っていると、「残りは帰りに使うので絶対に袋の口を開けないように」と背後から聞こえてきた。
カイロの残りを帰りに使う!?使いかけのカイロの残りを?真意が分らぬまま私は駅の中を通り抜けた。
しばらく経ち、災害時に役立つ豆知識が記されたリーフレットを手にする機会があったのだけれど、そこにあの時の答えがあったのである。
使い捨てカイロは、一度発熱させてしまったら発熱を止めることはできないと思っていたのだけれど、密封できるジップロックのようなポリ袋に入れて空気を抜きながら封をすると、使用前のような冷めた状態になるという。
そして、封を開けると発熱が再開するので再びカイロを使うことができるのだそう。
ただ、注意点もあるという。
もともと8時間しか使用できないカイロを7時間使った後に密封した場合、カイロの使用可能時間の残りは約1時間前後。
4時間使用した後で密封した場合は、残り約4時間前後が目安なのだそう。
そして、使いかけのものはその日のうちに使いきることが好ましいとのこと。
このような知恵は、災害時に役立つだけでなく、冬のレジャーやアウトドアを楽しむときにも使うことができるため、知っておくと限られた資源を上手に活用できるように思う。
カイロを使用する機会がありました折には、ちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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