オトナの知識
オフィスビルの入り口で、大きな胡蝶蘭を抱えた女性とすれ違った。 胸当てが付いたシンプルなカフェエプロンを付けた小柄な女性だということは 後ろ姿から分かったけれど、抱えているそれが、あまりにも立派に花開いていたものだから、 女性の表情までは窺い…
道端に並べられた花壇で風に揺れていたのは、フラワー界の甘辛MIXコーデを思わせるような、 深紅色をした花びらの縁を純白のフリンジが囲んでいるフリンジチューリップだった。 そして、そのチューリップの足元は、カラフルなパンジーに彩られていた。 パ…
ドラッグストアのレジで福引の箱を差し出された。 予想外の展開に少しドキドキしながら箱の中に手を差し込んだ。 「よーく掻き混ぜて下さいね」と乗せ上手の店員に促され、箱の中を数回、グルグルとかき回し、 手折りの紙を引っ張り出して店員に差し出した。…
私がよく立ち寄る書店の入り口近くには、 児童図書、児童文学と呼ばれる類のコーナーが設置してある。 昔ながらの作品がまとう装丁は、時代を反映したデザインに変化しながら書棚に並んでいる。 中身は昔から変わらないけれど、“イマドキ”をまとうその様子を…
ドラッグストアに立ち寄ったときのこと。 日用品が並べられている陳列棚の前で外国人の方と店員が、 日本語と英語とジェスチャーを交えたやり取りを交わしていた。 互いの熱量から察するに、スムースな意思疎通ができていないのだろうということは、 少し離…
ずっしりと重いバターを陳列棚から取り出しカゴに入れた。 その場を離れかけたとき、少し離れたところに並ぶマーガリンのパッケージに印字されていた トランス脂肪酸の文字が目に留まり、その前まで行った。 確か、今年の夏頃からだっただろうか。 正確な時…
魚屋さんの前を通ると、肉厚で美味しそうな鮭が並べられているスペースに 「アスタキサンチン」と書かれたポップが揺れていた。 ドラッグストアでもバラエティーショップでもない、その場所で、 「新鮮」でも「美味しい」でもなく「アスタキサンチン」という…
マンションのエントランスを出ようとしたとき、後方から1人の少年が、私の横を疾風の如く走り抜けていった。 その少年を追うように聞こえた「行ってきます、は?」という母親らしき女性の声に 少し遠くから「いってきます」と少年の声が聞こえた。 そして、…
春の暖かさを肌で感じながら歩いていると、目の前を蝶が横切った。 蝶は、吉兆モチーフでもあるのだけれど、 私にとって、少々思い入れのある存在でもあることから、見かけるとつい目で追ってしまう。 この時季の時候(じこう)の言葉に夢虫(ゆめむし)というも…
デパ地下のスイーツゾーンを歩きながら視線を泳がせていると、 パステルカラーのマカロンが目にとまった。 心躍るのかと思いきや、私の脳内には力士や呼び出しの方の姿がぽわっと浮かんだ。 これほどまでに可愛らしいマカロンを前にして力士や呼び出しの方が…
ある場所で順番待ちをしていたときのこと。 少し離れたところに置いてあった紙面に「スマホ認知症」という文字があった。 私の順番まで、もうしばらくかかりそうだったこともあり、席を移動してその紙面に手を伸ばした。 こちらでも過去に、「ソーシャルデト…
ベッドに潜り込んでからの記憶が無いまま随分と早く目が覚めた。 目覚めたときに感じる部屋の空気が日に日に柔らかくなっているからか、 気合いを入れなくてもベッドから抜け出せるようになってきたように思う。 太陽が顔を出す前の、夜でも朝でもない、あわ…
この冬は何度、寒波が来るのでしょう。 道端の日陰に並べられていた手のひらサイズの溶けそびれている雪だるまを横目に、 そのようなことを思ってから随分と経ったように感じるのだけれど、 一向に暖かくならない日々を前に春への想いは募るばかりです。 春…
劣化していたアルバムから懐かしい写真を一枚、一枚剥がし、 新しいアルバムへ貼り替えていた時のこと。 以前の仕事仲間たちと参加した異文化交流会の時のポラロイド写真があった。 異文化交流会と言うと少々堅苦しい響きだけれども、 実際には、日本に住ん…
自分が生まれ育った国のことを、どれくらい知っているのだろうか。 外国の方が知っている日本のことを見聞きし、そのようなことを思うことがある。 地元や何らかの関りがある土地のことであれば、多少なりとも知ってはいるけれど、 行ったことがない土地や関…
友人との雑談中、不意に、このようなことを尋ねられた。 柊希は和歌とかの本が鞄に入っていることが多いけれど、何を思いながら読んでるの?と。 何を思いながら……、始めての問いかけというものは思考が一瞬、行き場を失う。 あんなことや、こんなことや、と…
音楽を取っ替え引っ替え部屋に流しながら紙資料の整理に勤しんでいたのだけれど、 作業が思うようにはかどらず、しばらくの間、真っ白な天井を見上げていた。 暖房によって乾いた室内の空気に混ざり広がるメロディーは、 その音もまた乾いているように感じら…
もうすぐ満月がやってくる。 1月の満月はウルフムーン(狼月)と呼ばれることがあるけれど、 ここ最近の、冬が本気を出したかのような気候を思い返すと、 今年はアイスムーン(氷月)の呼び名の方がしっくりくるようにも思う。 確か先日、2018年が始まった…
先日、必要に迫られて、いくつかの文献をはしごしていたのだけれど、 その中で、「玉の輿」という言葉が江戸時代からあったということを知った。 私が必要としていた内容からは随分とかけ離れていたのだけれど、 私の思考は更に本筋から離れ、いつの間にか「…
昨年の大晦日の夜は、普段よりも少し早く家を出て初詣へと向かった。 小雨がパラついていたからだろうか。 思っていたよりも気温が穏やかで、すぐに体温の上昇を感じた。 いつも真夜中まで車の往来がある通りはシンと静まり返っており、 信号機の色と街の明…
レモンを購入しようと陳列棚に手を伸ばした。 貼られているシールに記載してある番号が目にとまり、伸ばした手をすっと引き戻した。 今回は、普段目にしているはずなのに、記憶に残っていないPLUコードのお話をと思っております。 |そもそもPLUコード…
近所にあるプレスクールの前を通ると可愛らしい声でロンドン橋が聞こえてきた。 ※ここで言うプレスクールとは、0歳児から小学校に入る前までの子どもたちに対して、英語で保育が行われる日本の育児施設のことで、幼稚園のような位置づけの場所のこと。 久し…
ワタクシ、今、地味に葛藤中でございます。 何を葛藤中なのか。 それは、これからお話しようとしていることは、クリスマスイヴにするようなお話なのか、と。 ただ、既に世の中はクリスマスの話題で溢れておりますし、 幸せのレシピ集内でも毎年、クリスマス…
今年の干支である酉の置物を優しく拭った。 いつからだっただろうか。 毎年、陶器製の干支の置物を購入するようになったのは。 まだ2回目の出番が来ない干支がいるところを見ると、十二支が揃うのは少し先になりそうだ。 十二支全てが揃った年は全員を、ど…
まだ日差しが厳しかった頃、知人がこのようなことを言った。 完食という言葉、どう思います?と。 どう思います?と聞かれても、どの視点から答えたら良いのやら……と、 言葉に詰まっていると、「私はあの言葉、あまり好きじゃない」と仰った。 皆さんは「完…
先日、『ヒバクシャ国際署名』というものを目にしました。 私は頭の中で勝手に核兵器廃絶のための署名だと置き換えて、 「あ、あれのことね」と思ったのです。 だけれども、それならば、このタイミングでヒバクシャ国際署名と言い換えなくてもいいのでは? …
自宅から少し離れた場所にあるフラワーショップを目指した。 昨年の我が家は、マゼンタピンクが鮮やかなプリンセチアをお迎えした。 上手に育てられていたのなら、今年の冬も鮮やかな色を見せてくれていたことだろう。 今年もプリンセチアにするか、久しぶり…
頭の中を空っぽにしたくて近所のカフェでお茶をしていたときのこと。 いつものように街行く人を目で追っていた。 声も想いも見えはしないけれど、人の数だけ声も想いもあるのだと思うと、 目の前の景色がぐっと力強く目に映るような気がした。 しばらくする…
今日もまた、飽きもせずに日が落ちる前の昼と夜のあわいの景色を楽しみながら、 冬の空の凛とした空気を全身で感じる。 すぐに脳内劇場の幕が開く私にとってそれは、 自分の気持ちを、すーっと、あるべき場所へ誘ってくれるようなものでもある。 時々、お茶…
学生の集団とすれ違った。 輪の中から漏れ聞こえてきた「冬休み」という言葉に釣られて、 今の私にとっての素敵な冬時間を妄想した。 少々壮大が過ぎた妄想世界から私を現実世界に引き戻したのは、 歩行者信号機から流れる青のメロディー。 大切な、大好きな…