外国のおはなし
起床を知らせる目覚まし音がベッドルームに響いた。 出来るだけ穏やかに起きられるようにと“鳥のさえずり”を選んでみたのだけれど、 朝に弱い私にとってその音は、“鳥のさえずり”と呼べるほど穏やかなものではなく、 心地より眠りから私を強引に引きずり出す…
待ちきれずに湯呑に出してしまった薄いお茶を急須に戻しながら思う。 緑茶の香りは、どうしてこうも人の心をすーっと落ち着かせるのだろうかと。 茶葉は、お湯で淹れた際に溶け出す成分と茶葉に残ったままになってしまう成分がある。 その両方に栄養があるこ…
手帳を眺めていたら、 今年はエイプリルフールとイースターが重なる年だということに気が付いた。 様々な風習を生活の中に取り入れて楽しむことに長けている日本人は、 どのようにして、この双方を楽しむのだろうかと思った。 過去記事にて、イースターやエ…
ドラッグストアに立ち寄ったときのこと。 日用品が並べられている陳列棚の前で外国人の方と店員が、 日本語と英語とジェスチャーを交えたやり取りを交わしていた。 互いの熱量から察するに、スムースな意思疎通ができていないのだろうということは、 少し離…
空腹と思い出は最高の調味料だと思う。 そろそろ使い切ってしまいたいジャガイモに気付き、ジャケットポテトを作ることにした。 ジャケットポテトと言う呼び方をすると大層なものでも作るような印象を与えてしまうけれど、 ベイクドポテトのことだ。 紳士の…
目の前を青光りするサンマを咥えた猫が通り過ぎた。 今時、そんな……。 そう思った私は2度ほど、過ぎ去った猫の後ろ姿を確認し直した。 悠々と歩みを進める猫の口に咥えられた、 細長いサンマのシルエットを印象的に思うのは私だけではなかったようで、 すれ…
ポン酢の栓開けに悪戦苦闘していたら、 「ポン酢のポンってなんぞや?」と尋ねられた日のことを思い出した。 お世話になっていた外国人家族に日本料理を食べたいと言われ、 日本食を振舞うことになったときのことだ。 せっかくだから調理をするところから見…
シューズボックスの中を整理していると、 昨年の夏に使い残してしまったベランダ用の蚊取り線香が見つかった。 思わぬ場所から出てきたそれに、どうしてここに?と思いながら缶の蓋を開けた。 中からは深緑色をした渦巻きが顔を出し、 パンチが効いた、それ…
空腹を満たし、人通りが多い道を歩いていると、絶妙なタイミングでチラシを差し出され、 私の体は反射的にそれを受け取ってしまった。 こちらの歩調を崩すことなくグッと体を差し込み、 受け取り手が最も受け取りやすい位置にソレを差し出し、 こちらが受け…
私たちが口にしている野菜の多くが、 様々な時代に国外から持ち込まれたものが元になっているだと何かの本で読んだことがある。 今と比べて物流システムがゼロに等しいような時代であっても、 伝わるべきものは伝わってくるのだから、 世の中のものごとは、…
冬と春の狭間を行きつ戻りつ過ごす日々は、 人が成長する少し前の状態にも似ているように思う。 新しい環境を望んでいるのに、新しい何かに気付くことができたのに、 心と体のタイミングが噛み合わず、進みたいのに名残惜しい。そのような矛盾を胸に、 慣れ…
劣化していたアルバムから懐かしい写真を一枚、一枚剥がし、 新しいアルバムへ貼り替えていた時のこと。 以前の仕事仲間たちと参加した異文化交流会の時のポラロイド写真があった。 異文化交流会と言うと少々堅苦しい響きだけれども、 実際には、日本に住ん…
自分が生まれ育った国のことを、どれくらい知っているのだろうか。 外国の方が知っている日本のことを見聞きし、そのようなことを思うことがある。 地元や何らかの関りがある土地のことであれば、多少なりとも知ってはいるけれど、 行ったことがない土地や関…
無性にアジフライを食べたくなり、「今日の夕飯はアジフライにしよう」と早々と心に決めていた。 単純なのだけれど、今夜は、今一番食べたいアジフライを食べられる、 そう思うだけで昼間の諸々を普段よりも数割増しで頑張れる自分がいた。 自分にとっての小…
昨年末に準備したお正月用の切り花が未だに元気に咲いてくれている。 幾度となく行った水あげが功を奏したのだろう。 一度はそのお役目を終えようとしていた花たちが息を吹き返し、 気付けば一か月ほど咲き続けてくれている。 もちろん、随分と小さなブーケ…
仕事の都合でヨーロッパへ引越した友人が、 「髪の毛がこんな風になってしまいました」というメッセージと共に 豪快な寝ぐせが付いた写真を送ってきた。 始めは、その豪快な寝ぐせを見て笑わせてもらっていたのだけれど、 艶やかなロングヘアーがトレードマ…
しっかりと味がしみ込んだゴボウをキッチンで摘まみ食い。 地味な出で立ちとシャクシャクとした歯ごたえは、癖になる。 摘まみ食いをするその時まで、私の記憶からはすっぽりと抜け落ちていたのだけれど、 高校生の頃に素敵だと思い眺めていたモデルさんがゴ…
近所にあるプレスクールの前を通ると可愛らしい声でロンドン橋が聞こえてきた。 ※ここで言うプレスクールとは、0歳児から小学校に入る前までの子どもたちに対して、英語で保育が行われる日本の育児施設のことで、幼稚園のような位置づけの場所のこと。 久し…
日本でも少しずつ見かけられるようになってきた“クリスマス・クラッカー”。 今回は、クリスマス・クラッカーのお話を少し、と思っております。 ご興味ありましたら、ちらりと覘いていってくださいませ。 このクリスマス・クラッカー、 イギリスのクリスマス…
少し前に、ピカールのお話をしたからだと思うのだけれども、 最近、磨きたい、いや、磨き上げたい気分が沸々と湧き上がっている。 それならば、目につく場所を徹底的に磨きあげれば大掃除も完璧で一石二鳥じゃない! と思うのだけれども、そうは問屋が卸さな…
どこからか「蛍の光」が聞こえてきた。 卒業式や、お店の閉店時間を知らせるとき、 これからであれば、NHKの紅白歌合戦をご覧になる方は、そのエンディングでも耳にするであろう、あのお馴染みの曲だ。 日本人が「蛍の光」を耳にするとき、 胸の奥をキュ…
先日、今年初めての「よいお年を」という言葉を発した。 お互いにそう発したあと、「今年も何だかんだ早いですね」と笑い合った。 人に限らず、時間にも季節にもそれぞれ自分のペースがあるようで、 相変わらず、私を待っていてはくれないようだ。 どのよう…
学生の集団とすれ違った。 輪の中から漏れ聞こえてきた「冬休み」という言葉に釣られて、 今の私にとっての素敵な冬時間を妄想した。 少々壮大が過ぎた妄想世界から私を現実世界に引き戻したのは、 歩行者信号機から流れる青のメロディー。 大切な、大好きな…
飲み物が運ばれてくるのを待っていると、 「「カンパーイ」」とあちらこちらのテーブルから聞こえてきた。 どのテーブルからも、肩の力がふっと抜けたような穏やかな空気が感じられ、 その空気は、こちらまで伝染してくるようだった。 世界各国に乾杯は存在…
年末の大掃除も兼ねて古い写真を整理していたら、 “真実の口”の名で知られているモニュメントの前で撮った写真が出てきた。 幼い自分を懐かしく思いつつ、 教会の奥に設置されていた真実の口を間近で見るために並んだ当時のことを思い返した。 “真実の口”と…
電話をかけた。 調べものをお願いしたこともあり、しばらくの間、保留音を楽しむことになった。 流れてきたのはベートーヴェン作曲の『エリーゼのために』。 保留音とは言え、こんなにゆっくりと『エリーゼのために』を聴くのは久しぶり。 この曲は、学生の…
クリスマスオーナメントだけでなくクリスマスコスチュームを目にする機会も増えたように思う。 ハロウィンの仮装が定着したこともあり、 仮装することに恥ずかしさを感じていた人たちのハードルも下がりつつあるのだろうか。 そのようなことを思いながら店内…
Happy Halloween! 既にハロウィンパーティーを終えた方々も多いかと思うのですが、 今年もやってきましたね、ハロウィン。 今年の我が家は少々慌ただしくしていることもあり、 小さなハロウィンインテリアをお手入れも兼ねて引っ張り出して、 カボチャを味…
曜日感覚が乏しい私は、人の往来多さで祝祭日に気付くことが多い。 その日も家族連れを多く見かけるような気がして、 バッグの中からスマートフォンを取り出すと、カレンダーが日曜日を示していた。 すれ違う人たちが向かう先を目で追う途中でフリーマーケッ…
雨は嫌いではないのだけれど、外出するとなると少々話が変わってくる。 その日は、雨を押してでも外出しなければいけない時用にと準備してある、 お気に入りのレインブーツに足を入れ、玄関ドアを押し開けた。 雨の日にだけ使うことができるアイテムに気分が…