今年も和菓子店の店頭に「水無月(みなづき)」が並ぶ頃となった。 水無月(みなづき)とは、いつの時代から食べられるようになったのかは分かっていないようなのだけれど、栄養がある「葛」や「ういろう」と、穢れや邪気を祓うことで知られる小豆を合わせた和菓…
縁あって譲り受けた扇子を引き出しから取り出した。 扇面には紫陽花が、中骨には透かし彫と蝶があしらわれているお気に入りの1本である。 絵柄が紫陽花ということもあり、使用できるのは梅雨が明ける頃までの短い期間ではあるのだけれど、近頃の私の愛用品は…
横断歩道へ向かっていると既に信号待ちをしている数名の小学生が目に入った。 身体よりも大きなランドセルにサブバッグを持ち、首からは水筒もぶら下げていた。 顔の半分はマスクに覆われており、学校と家の往復も、先人達の時代とは異なる意味で大変だと思…
キュウリのトゲが指先をチクリと刺激した。 随分と久しぶりのように思える感覚に、手にしているそれを目の高さまで持ち上げて眺めた。 とても野性味溢れる濃い色と鋭いトゲを前に、これは痛いはずだと思った。 ピーラーで皮を剥いて縞模様にするつもりだった…
窓を開けると、梅雨特有の、湿った土の匂いと濡れたアスファルトの匂いが混ざった匂いがした。 この匂いが好き!とテンションが上がるような匂いではないのだけれど、この時季にしか感じられないことを体は覚えているようで、この感覚が、今年もそろそろ折り…
何かひとつ、新しいことにトライしてみたくなった。 時折、続けられるかどうか分からないからトライできないでいると耳にすることがある。 トライしようとしているモノゴトにもよるけれど、私は、誰かに迷惑をかけるようなことでないならば、続けられなかっ…
自宅近くにある小さな公の前を通ると、入り口付近に目立つトラックが数台止まっていた。 何事だろうかと気になり、公園の中を窺いつつ歩いていると作業員の方々がジャングルジムを撤去しているところだった。 ジャングルジムには角ばったタイプと、地球儀の…
当時の江戸でベストセラーとなり豆腐ブームの火付け役となった『豆腐百珍(とうふひゃくちん)』をパラパラと捲った。 今の私たちからすれば、レシピ本は見慣れたものなのだけれど、その当たり前の走りとなった本だと思って捲ると興味深い本である。 今のよう…
用事を済ませに外出すると、クチナシの香りが風に乗ってやってきた。 香りの出所に心当たりがあり、少しだけ遠回りをして目的地へ向かうことに。 丁寧に切りそろえられたクチナシの垣根に散らばる艶やかな白は、湿度が上がるこの時季に清涼感を与えてくれる…
誰の言葉だったか忘れてしまったけれど、誰かが、「眠りにつく前に、翌朝を楽しみにしている人は幸せだ」といった言葉を言い残していた。 そう思いながら目を閉じると、心地良く眠ることができるのだそうだ。 ベッドに入って、そのような話を思い出したけれ…
私は密封チャックが付いていない袋入り乾麺を開封する際、縦面の端をカットするようにしている。 袋の上部、横面をカットすれば開け口を最小限に抑えることはできるのだけれど、どうにもこうにも、残りを封じ難いように感じるのだ。 しかし、縦面をカットし…
時折、目を丸ごと水洗いしてしまいたい気分になることがある。 友人にそう言うと、その表現は怖いから止めてくれと言われてしまうのだけれど、花粉が飛び交う時季などは特にそう思う。 そして、「丸ごと」という願いは叶わないものだと早々に見切りをつけて…
家中の窓を開け放った。 風が、あちらから、こちらからと自由に吹き抜けていく感覚は、とても心地良い。 時折、バタンッと想像以上の音を立てて閉まるドアに驚くこともあるけれど、風が残した足跡のような気がして、不思議とイラつきはしないのである。 その…
スイカが店頭に並ぶようになった。 1個も食べられないという理由から、既にカットされたものを購入することが多いのだけれど、今年は1個丸ごと購入して、スイカでスムージーでも作ろうかと思うこの頃である。 スイカの起源は古くエジプト王の墓からも発見…
真っ赤なテーブルクロスを洗った。 12月のホームパーティーと言えば聞こえが良いけれど、早い話、家吞みのときに使用するイベント時専用のクロスである。 柄に凝ったこともあるのだけれど、食器や料理との相性を考えた結果、シンプルな無地のものに落ち着…
クローゼットの中を片付けていたら、レトロなボタンが落ちていた。 素敵なボタンではあるのだけれど、そのボタンが付いていたであろうお洋服を思い出すことができず、とりあえずキャビネットの上に置いておくことにした。 結局、1か月ほど経ってもボタンが…
そろそろ梅雨入りする頃だろうか。 天気予報サイトをのぞきこみながら、そのようなことを思った。 思い出しついでにと玄関へ向かって取り出したのはレインブーツと真新しい傘である。 それらを手に取りやすい位置に配置し直してリビングへと戻った。 ワタク…
この時季の満月を見上げると、「田毎の月(たごとのつき)」という言葉が思い浮かぶ。 田植え前の水が張られた田んぼ毎に、月が映り込む様子表した風流な言葉である。 この言葉が指す風景は、長野県にある姨捨山(おばすてやま)の麓で見ることができるという。 …
今春は、家中の至る場所の断捨離を行ったこともあり、自分にとって本当に必要なものや、変わらず好きなものが何なのか、昨年よりもクリアになったように思う。 先日は、若干スッキリしたように見えるクローゼット内を見渡しながら、昨年辺りから新調したいと…
遠目からでも美しさがハッキリと分かるそれは、白いツツジの花だった。 どことなく青色を含んだような澄んだ白は、触れることを躊躇うくらいの瑞々しさを放っていた。 この時季に咲く花は、苗代花(なわしろばな)と言って、山の神様に田んぼに来ていただく…
先日、遠方に住んでいる友人と話をしていると不意に「踵を床に付けた状態でしゃがめる?」と言うのである。 しゃがめると思うと答えながら、スマホ片手にその場にしゃがみこみ、「しゃがめる、しゃがめる、しゃがめた」と早口で答え直した。 美容や健康を兼…
4月にいただいたバラの花が1か月経った頃、花瓶の中で色褪せぬままドライフラワーになった。 果てた姿までも美しいと感じられるのは、バラの気品がそうさせるのだろうか。 想像以上に長い時間、楽しませていただいたバラを花瓶から取り出した。 花瓶に対し…
6月の楽しみは、大好きな紫陽花の切り花を買うことだ。 ブルーや淡いグリーンのものを手に取ることが多いけれど、ピンクやパープルの紫陽花に目移りすることも。 どの色も素敵すぎて決めることができないときには、純白の紫陽花にグリーンの葉を合わせるこ…
手付かずのまま放置してしまったニンニクと目があった。 ニンニクは、予めすりおろされているタイプとフレッシュタイプの両方を常備しているのだけれど、その週は、すりおろしタイプの出番が多かったのだろう。 フレッシュタイプのニンニクは放置期間を告げ…
ガーデンチェアでハーブティーを飲んでいると、焼き魚の香ばしい香りが風に乗ってやってきた。 その香りにつられた私の脳内には、ホッケの塩焼きを食べたいという思いが広がった。 そこに美味しい日本酒があれば、最高である。 英国暮らしをしいているときに…
駅へ向かう道すがらにある駐車場の一辺には20メートルほどの花壇が設けられている。 そこに植えられているのは紫陽花で、この時季は、青々とした葉が茂っており、これから咲く花の蕾が付き始める頃である。 先日、久しぶりにこの花壇前を通ったのだけれど…
かれこれ4、5年ほどキッチンのワークトップスペースで育てている観葉植物があるのだけれど、今年はこの成長が著しい。 気温が上がるにつれスペースを占領しそうな勢いで成長しだしたこともあり、思い切って鉢をレンジフードの上に置いてみることにした。 …
しばらく使用していなかったバッグの中に、持ち運び用のジュエリーケースが入っていた。 取り出して中身を確認すると、中には修理に出す予定でいた、切れてしまったネックレスチェーンが2本入っていた。 いつでも修理に出せるようにとバッグの中に忍ばせて…
PCのモニター画面に視線を向けたまま、電子印鑑をカチリと押した。 気付けば電子印鑑を使用するようになって随分と年月が経つのだけれど、未だに電子印鑑一辺倒ではなく、手彫り印鑑の出番があることに少しだけ安堵のような気持ちを覚えた。 いつだったか…
最近、目にする機会が増えているCMがある。 CM内には「桃太郎は、あまりの暑さに川を泳いで行ってしまいました。かぐや姫は森林伐採で竹を見つけられず……人魚姫はゴミが邪魔で地上に上がれませんでした。物語が変わる前に、守りましょう、地球環境」とい…